プライベート保険アップデート
以前書いたプライベート保険ですが、長く住んでる間にいろいろ誤解していた事やわかってきた事があるので、改めて書き記しておこうと思います。というのもなかなか自分で検索してもたいした情報がなく、実際に保険で何がカバーされるのか、どれぐらいの自己負担があるのかなどわからないという事が自分自身多々あったと思うので。
まずおさらいから、 オーストラリアの永住者向けプライベート健康保険は、政府主導で制度が決まっているHospital Coverと、いわばおまけであるExtra Coverに分かれています。Hospitalは手術しなければ普通保険を使う事は無いので、おまけのExtraで歯科やフィジオセラピーなどの費用の一部分を支払って少しでも取り返そうという感じの構成ですが、実際手術をしなければ元が取れる事は絶対にありません。保険ですから。Extraは仕組みも簡単だし病院医療ではないので以下割愛して、プライベート保険というのはHospital Coverの事とします。また公立というのは公費患者の事とします。 ・公費患者と私費患者 オーストラリアでは病院(GPではなく、GPで紹介してもらってからかかる専門医)にかかる方法は二種類。公費患者として、膨大な待ち時間に並んで、公立病院で無料で治療してもらう方法と、私費で私立病院や、公立病院の私費患者としてかかる方法(待ち時間はずっと短い)です。 ・外来のケース まずいくつか誤解されやすいのですが、外来のケースはプライベート保険は一切カバーしません。一方で私立でも同等で同じ額がMedicareでカバーされます。つまりメディケア公定料金から計算して支払われるという事です。ただし私立はメディケア公定料金よりも遥かに高い金額がかかるので、大体診察1回で30ドルから100ドルぐらいが自腹になると思います。公立はメディケア設定料金なので無料という事になります。この段階ではプライベート保険はまったく活躍しません。 ・入院のケース 外来だけですむ場合ははっきり言ってプライベート保険カバーされないので保険があろうが無かろうが一緒なのですが、そしその先診察の結果手術という事になったら数十万から数百万円程度の金額がかかってしまい経済的に厳しくなってしまいます。 まず入院&手術にかかる費用に関してですが通常下記のようなものがあります。 手術室、設備使用費(Theatre fee) 病室費用(Accommodation fee) -------------------- 医師治療報酬 麻酔科医報酬 助手医師報酬 各種検査費用 以下私立の場合です。 上の二つは病院に対して支払うもので、私立ではメディケアでは一切カバーされず額もかなり大きいです。時間にもよりますが1時間程度で終わる簡単な手術の場合は手術室が1000ドルぐらい、病室は一泊あたり700ドルぐらいでしょうか。もちろん病院によって違いますが一週間も入院すれば結構すごい額になっていまします。ちなみに公立に私費患者として入院する場合は一泊300ドル程度のようです。 下の4つに関しては、まずメディケアから"メディケア公定料金"の75%、プライベート保険が残りの25%が分担して、メディケア公定料金の100%が支払われるのに加えて、医師の要求額とメディケア公定料金の差額分もプライベート保険から支払われます。全額支払われる場合と、自腹がいくらか出る場合がありますが、その辺は保険会社と個々の医師の間の細かな契約が結ばれているようですので、担当医師の秘書ぐらいしかわかる人はいないと思われます。治療報酬の請求は各医師のオフィスからバラバラに来るという日本ではちょっと考えられない制度なのですが、執刀医以外はバルクビルドになっている事が多く、請求書が来なかったり、メディケアの書類にサインして送り返すだけという事が多いようです。それから驚くのが、実際切ってみて予想以上に悪くて時間がかかった場合は金額が増えるということです。それによって自腹が発生するようなケースもあったりと本当にややこしいですが、高額な報酬を要求する有名な医師の場合は、手術前の見積もりも予定通りと予想外の2種類くれるようなこともあるそうです。 そんな感じで、もし保険会社と担当医師の間で全額カバーされてる契約の場合は、入院手術の一切すべてがメディケアとプライベート保険でまかなわれるので、excess(免責額設定)がなければ完全無料。excessが250ドルの場合は入院時にその金額を支払います。もしギャップがある場合はその分を自腹で支払います。 実際加入するしないの判断なんですが、プライベートHospital Coverは入院したときのみ報酬が支払われるものだということです。なかなか出番がないんですが、でもいざ何か病気が見つかったときは公立だと心臓発作や脳卒中のようにすぐに死なないような病気(ガンや関節の病気で寝たきりなどを含む)であれば数ヶ月から数年に及ぶ長大な待ち時間の間にどんどん生還の可能性が減っていくというような事も多々あるそうですので、保険はあくまで保険と割り切るしかないですね。それでも一人年間1000ドルとかそんなもんですから、どう捕らえるかは個人の価値観によるでしょう。あと個人の年収が84K以上(夫婦なら倍)になるとプライベート保険に入らないとメディケアから罰金として給与の1%を徴収されるので、それ以上の収入の場合は安いプライベート保険に入った方がお得という事になるので選択肢はないでしょう。 最後に私立病院で治療の際に発生してる自腹額については、メディケアの方で常に家族単位の合計額を計算していて、カレンダー年度内にもし家族の合計が一定額(1000ドルちょっと)を超えた場合は、セーフティネットが発動され、以降メディケア公定金額ではなく実際の医師の請求額の85%がメディケアから支払われるようになり、劇的に自腹額が少なくなりますので、一見ひどいオーストラリアの医療保険制度もそのあたりの事はそれなりに考えられているようです。
by trancoso
| 2012-10-03 21:20
| 移住後の手続き
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